いつだろう。およそ、5年ぐらい前になるのかな?
私の住む町の近くで、小澤征爾さんが参加される
学生のための公開レッスンが開かれました。
たまたまチケットをいただいて参加したのですが、
これが感動的で。
一人だったので、ぽつんと空いている前から二番目の列の真ん中に着席しました。
わーい!と思ったら。そのあとなんと、小澤さんが真ん前に座られてびっくり。
公開クリニックというのは、地元の高校生の演奏を
そうそうたるメンバーがコメント、指導をしていくのですが、
その中で小澤さんが「そもそもなんで管楽器の子たちにバッハを演奏させるの?管楽器でバッハのこの曲やったって、意味ないでしょう?ピアノでさんざんやってきたけど。」
とコメントが。まさかの選曲ダメ出し?と、ちょっと空気がピリッとしました。
その時、ちょっと間をおいて有名なホルン奏者の方が
「おっしゃる通り、彼らは一般にピアノや弦楽で親しんでくるようなバッハはやってこなかったでしょう。でも、だからこそ彼らにとって、バッハに触れられる機会はとても貴重なんです。僕は彼らにバッハの持つすばらしさを経験してほしい」
とおっしゃったんです。
それに対して小澤さんが
「そっか。なるほど。。。そうだよね、うん。その通りだ。彼らにとってのはじめてのバッハか。それは責任重大だね。うんわかった、さっそく始めよう!」
と。もう、じーんとしました。
わずか10メートル内で行われるやり取りは、とんでもなく尊いものでした。
座っていた座席から立ち上がり、指示を出す。
小澤さんが生徒に対して期待する音は、プロに対するそれと同じ。
どんな人にも対等なんですね。
すっかり合奏に参加している気持ち。
小澤さんの人間の大きさや、音楽がいろんなものを超えていく現場にいられて、
本当にかけがえのない時間を過ごさせていただきました。
もちろん演奏はいっそうすばらしく、その場で消えていく音だからこそ
いとおしい。
その数日後、息子も学校の音楽鑑賞会で、小澤さんの第九を聴く機会に恵まれました。
今回、そんな数年前の出来事を思い出したのは、
音楽を宇宙に届けるプロジェクトを目にしたから。
12月1日に、サイトウキネンオーケストラと、JAXAの壮大なプロジェクトが開催されました。
ぜひぜひ、動画を視聴してみてくださいね。
コンマスが、小澤さんの指先から繰り出される音楽を、
一つも取りこぼさないよう全神経を集中させている姿。
みなさんの心が一つになる演奏。
地球に生まれてきてよかったな、とまた一つ思えました。
こんな素晴らしい機会を、どうもありがとうございます!!